スピーチ

今日、内定者セミナーでスピーチをした。
集まった内定者個々人が考えたスピーチのテーマをシャッフルしてランダムに内定者に配る。
与えられたテーマが『好きな芸能人について』
特に、熱心にテレビを見るわけではないので、適当に見繕った言葉でお茶を濁そうとした。
テレビよりも、ラジオを聞く機会が多いので、ラジオ番組を持つ芸能人を挙げてスピーチする事にした。
ラジオと言っても、TBSラジオに固定して流しっぱなしにしているので、TBSラジオの深夜帯にラジオ番組を持っている芸人、爆笑問題太田光伊集院光を例に挙げてスピーチした。

爆笑問題太田光は、テレビとラジオで大きく変わるわけではないが、雑誌の連載など執筆活動や時事問題を取り扱うバラエティー番組などでは真面目な一面を見せる。
今、現在ラジオから流れている番組では、立川談志と一緒に落語をやっている。
落語とはどういったものであるかという定義など詳しくはないが、時事問題や政党批判などをユーモアを交えて行っていく様子から想像するに、新しい形の落語であると言えるのではないだろうか。
立川談志曰く、「俺が遺言を残すとするならばコイツだ」とまで言わせる存在であるらしい太田光
いいともなどでは一度調子に乗ってしまうと留まる所を知らない様子で突っ走る姿が鬱陶しく思うところもあるだろう。
これを面白いと感じるか、それとも悪ふざけと捉えるかは難しいところだ。
場所をわきまえず生放送にも拘らず、タイムリーなネタを入れてくるところは、方々からお叱りを受ける可能性を持ちながらもそれを実行してしまう。
こんなことして芸能界を干されたりしないのだろうかと心配になるのだが、それは取り越し苦労のようだ。
あまり意識はしないのだけれど、太田の発言はある程度の影響力を持つものだと思える。
芸術系の学部を卒業しているせいか、どこか芸術肌を感じる発言や思想を完全に受け入れることはできないものの、頷ける部分がある。
自分の思ったことを素直に伝えられる存在。
そういった意味では羨ましい性格であり、自分自身を偽っていないとも言える。
嫌われる要素を持ちつつも、何処か憎めない存在。
注目に値する存在なのだ。

君が僕に残したものは

君は思い出の場所に立っていた僕を見つけると、優しく声をかけた。



「久しぶりね、こうやって話すのって」



僕らが今まで過ごした時間の中で、この時の彼女の言葉を僕は鮮明に覚えている。不思議なくらい透き通っていた彼女の声。僕はその声を聴いて、改めて僕には彼女が必要なのだと思った。



「私達はもう会わない方がいいのかもしれないね」

「え・・・?」

「さようなら」



その時、水面に落ちる一筋のしずくが僕の頭に浮かんだ。水面は少しずつ波紋を広げていった。何故だろう、その時僕は自然と泪で頬を濡らしていた。突然告げられた言葉の意味を理解しようと彼女の表情を見た。けれど、泪で濡れて彼女の表情を確認できなかった。右手で涙を拭い再び視線を戻すと、彼女の背中はもうずいぶん遠くまで離れていた。僕はいったい何が起こったのかわからなかった。唯一把握できたのは、その日はとても強い雨が降っていたということだけだった。




夏の陽気が僕の気持ちを更に暗くさせる。嫌味なほどに照りつける太陽が、僕だけをその場で浮いた存在にさせている。滴る汗を流れるままに歩く僕の後姿は、さぞ近寄りがたい雰囲気を醸し出していることだろう。

雨の季節は人を物思いに更けさせる。どうってことない事をアンテナが受信して、あれこれと考えてしまう。なんで、女子高生のスカートはどんどん短くなるのだろうとか、体を焼くのが流行ったあとになぜ美白ブームがやってくるのだろうとか・・・。ありとあらゆるものが僕の視覚から脳へ伝達され、僕の知らない色んな感覚器官が活発に活動する。表面に出ている部分とは対照的に、体の内部では想像することができないほどのスピードで処理が行われている。いまさら何を考えるというんだよ。



彼女との距離は次第に離れていっていたのだ。交わす言葉の数も、お互いの気持ちを伝える回数も、一緒に過ごす時間も。飽きもせずに語り合ったあの日々、偶然を装って彼女を待ち続けた時間、突然泣き出す君の姿、気づかないフリして通り過ぎるよそよそしさ、無断欠席した英語の授業、返事の来ないメール、留守番電話のメッセージ・・・。



日に焼けた女が黄色い声を挙げながら男と歩いている。突然怒り出した女に男は強引に唇を奪った。不意を突かれて驚いた様子だった女は、次第に頬を緩ませて男に微笑んでみせた。人目を気にせず口づけを男に返す。僕もあんなふうだったのだろうか。今となってはもう思い出せない。



「僕の話を聞いてくれないか」

今となっては少し古いと思いながらも僕は彼女の家のポストに手紙を入れた。メールにも電話にも反応を示してくれない。それなら手紙で気持ちを伝えよう。時間が問題じゃなかった。お互いの気持ちを知ることが僕にとっての解決策だった。僕は催促もせずにただ待ち続けた。



まばらな人を乗せた終電は、様々な想いを乗せて緩やかなスピードで都心を目指していた。僕はうなだれながら、早く目的地へ着いてしまえばいいと思った。自分の気持ちとは裏腹に鮮明に思い描くこの頭をどうにかして欲しかった。あんなに大好きだった雨の季節は、今の僕にとってはもっとも嫌いな季節となってしまっていた。



「話がしたいの」

意外なほど早く返事が僕に返ってきた。彼女のいない向かい側の席を見つめながら学食でカレーを食べていると、彼女の方から声をかけてきたのだった。僕の心は躍り出したくなるくらい高揚したが、彼女は学校が終わったらいつものあの場所で待っているとだけ告げると、背を向け行ってしまった。僕は興奮する気持ちを抑えつつも、彼女の後姿に陰りを感じたのを気にしていた。



乗客を吐き出した電車は僕を下ろした後にゆっくりと走り出した。急ぎ足で階段を駆け下りてきた中年のサラリーマンが、無常にも自分を置き去りにしていった電車を失意の目で見つめていた。僕は彼がその後どうなるのかを気持ちとは裏腹に冴え渡る頭で思い描きながら家路に着いた。終電を逃した後のファミレスほど惨めな気持ちになるときはない。彼もまた店員に冷たい視線で見られながら朝を迎えるのだろうか。



ふと見上げた夜空には、不思議なくらい多くの星が輝いていた。

宛名のない手紙

多く語ることはないけれど

時たまポツリと話すあなたが好き

自分を捕らえて離さないその言葉は

決してあなたが拘束するのではなくて

自ら離れていくことができなくなるのです



あなたが僕をどう思っているかなんて

そんな大それたことわからないけれど

いいんだ 側にいられるだけで

だから だから どうか

ずっと変わらないあなたでいてください

僕の見知らぬ誰かへ

雑踏を駆け抜けるバイク音が

僕の気持ちをかき混ぜるとき

信号待ちをしているあなたは

何を思っているんだろうか



冷たい雨が僕の頬にあたって

雨の到来を静かに伝えるとき

寄り添い歩くカップルは

僕の姿をその眼で捉えるのか



自己主張をして止まないネオン

排気ガスを撒き散らすバス

車が通ると揺れるアスファルト



人の集う駅前という混沌で

僕の知らない人達は

個々の思考の中で

何を感じ 何を映すのか



雨の降る交差点の中

僕は見知らぬ誰かを探しています

Only one

さよならを言うことが苦手な僕は

またあしたと言って今日まで歩いてきた

昨日の出会いが今日続くともわからない

まったく違った場所にいるかもしれないのに



過去を思い出すことが苦手な僕は

その現在(イマ)という瞬間を繰り返していた

昨日の出来事が今日続くともわからない

未来を思い描くことすら容易でないのに



不器用な僕は一体どれだけ伝えられたろうか

どれだけの想いを宙に揉み消してしまったんだろう

今こうしていることが不器用の延長だというのなら

きっとこの先も僕は不器用で在り続けるのだろう



バイバイと手を振って別れを告げ

古き良き日を思い描きながら

その様子をみんなに話すことができたなら

今ここにいる僕は存在しないのだろう

束縛

人は何かに縛られて生活している


無意識下に存在する世界に
存在すらしない妄想に
現実という変えようのない事実に



人は自らの欠点に蓋をする


誰にも知られたくない趣味とか
胸の内に隠された真の性格とか
一般的に疎まれる思想とか



自らの隠れた本当の感情を
吐き出す場所が必要なのだ


僕はそれを詩という形で吐き出す
言葉という目に見えるモノに置き換える


不完全な表現方法の中で
試行錯誤して感情を産み落とす

壊れたカラダ

僕のことを大好きなどこかの誰かが
もし僕のことを見つめているとするならば
どうやってその想いを受け取ることができるだろうか


本当に不器用でポンコツなこの身体で
僕はいったい何をすることができるだろうか
自分から誰かを想うことが解決になる気がする


愛だとか恋だとか
そんな立派な気持ちってなんだろう
暗闇に慣れた目では見据えることができない


答えを人に尋ねてしまう
自分だけしか手にすることのできない答えを
答えはそこら辺に無数に転がっているのだけど


ねぇ 僕のことを好きだと言ってくれないか
その言葉だけが僕を立ち上がらせてくれる
そんな気がしてならないんだ